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2009/06/09 (Tue) 嬉しさと悔しさの交錯




あぁ、そうか。

そうだったんだ。





「嬉しさと悔しさの交錯」





「あっ、いけないっ。」

部活で着替えようとした時、忘れ物に気づいたあたしは誰に言う訳でもないのにそう言葉を漏らした。

明日までに提出しなければいけない課題をどうも忘れてしまったらしい。
部活もやりたいし、大した物でないなら「明日でいいや」と済ませてしまうけど、こればかりはそうはいかない。

早く部活へ戻りたいので、取ってきてしまおう。

そう思って、自分の教室へと向かっていた途中、やけに目立つ髪色の奴に出くわした。

「おう、たつき。部活はどうした?忘れ物でもしたか?」
「あ、一護。」

やけに目立つオレンジ色の髪。
眉間にしわを寄せた無愛想な顔。

そいつの名前は、黒崎一護。
お互いほとんどの事を知っているあたしの4歳からの幼馴染。

「うん、ちょっと課題の忘れ物。・・・あんたこそどうしたんだよ。」

一護の質問に答えた後、あたしは‘わかりきった質問’をする。

鞄を持ってない。たぶん教室に置いてきたのだろう。
そして、ここから行ける場所なんて一つしかない。

「ん?ああ、ちょっと生徒指導の教員に呼ばれてな・・・」

・・・やっぱり。

「この前の事?」
「ああ、たぶんな。」
「ちゃんと事情話せば?」
「・・・めんどくせぇ。」
「・・・じゃあ、少しは愛想良くさ・・・」
「俺がそんな柄か?」
「せめて、挑発してるように見える態度はすんなよ。」
「ああ、わかってるよ。」

そう返ってくる返事がわかっている会話をこういう時にあたし達はする。
わかっているというか、一護の性格上そう答えるだろうという前提での会話なんだけど。
もしこれを傍から何度も見ていると、機械的な会話に見えるかもしれない。

「じゃあな。」とあたしに言って、一護は生徒指導室へと再び歩いていった。


一護はひどく不器用で、とても真っすぐな奴だ。

言い逃れる為に言い訳も嘘も言わない。
そして、必要以上の事を言おうとしない。
・・・何を言っても理解してくれないとわかっているかのように、半ばもう理解してもらう事を諦めているかのように。

一護と話していた事からしても、呼び出された内容はまた「喧嘩」の事だろう。

相手側からの一方的な挑発、理不尽な理由からの喧嘩の申し込み・・・
一護も馬鹿らしいと思っているのだろう。
最初は相手にしないのだが、相手がさらに突っ掛かり、最終的に「黒崎、俺らが怖いのか?」などといった挑発に、一護がしびれを切らして・・・というのがよくあるパターンだ。

あれを『喧嘩』と言うのだろうか、と思うような事で、こうも呼び出しを一護は何度も喰らう。

その時に、どうしてそうなったかと説明すればいいのに・・・一護はそれをしない。

何でそうしないのか、言えばいいのに・・・とあたしにも、一護がそうしない理由がわかった出来事が起こったのは昔の事・・・

あれは中学の時、たまたま一護と一緒に帰っていた帰り道に、他校の生徒達が一護に喧嘩を売ってきた。
あたしも参戦して、その喧嘩に勝った次の日は、当然あたし達は呼び出される。

場所は職員室。
他にも多くの教師がいる中、体育系の生徒指導の教師がわざと他の教師達に知らせるかのような大声で、一護に話し始めた言葉にあたしは驚いた。

「黒崎、また喧嘩か。お前もよく飽きずにやるな。」

「何で、他校の生徒を怪我させた?」

「何か弁明する事があれば聞くが?」


・・・この教師は何を言っているのだろう。
まるで一護がすべて悪いと言う言い方。
何でこうなったか、など聞く様子もない。
言葉では‘一応’言っていても、何を言っても一護の言う事など参考にしない、言い訳としてしか受理しない言い様で。

それをおかしいと思ったあたしが反論しようとすると、一護の手があたしを制した。


・・・何でだよ。昨日なんて明らかに相手が悪いんじゃないの?


おかしすぎる。
他の教師達も何で何も言わないんd・・・・・・あ。

・・・あたしも気づいてしまった。

周りの教師は、冷たい視線で一護を見ている。
「‘あの’黒崎が、‘また’問題を起こした。」という決めつけた冷たい目で・・・誰も一護を庇おうとしない。

そう、今前にいる教師も、他の教師達も、「目立つ髪」「無愛想な顔」などの事から一護を『不良生徒・問題児』というカテゴリーに入れて、「喧嘩で一護が勝って、他校の生徒に怪我をさせた。」という結果で全てを判断している。
大して知りもせずに、外見だけで決めつけて、過程を知ろうともせず、結果だけでまるで全てを見ていたかのように、一護を責めたてる。

・・・あぁ、何て勝手な大人達なのだろう。
自分達があたし達より人生を長く生きてきたからって、自分達だけの経験で物事を決めつけるなどあっていいのだろうか。

「先生達はいつでもうちの生徒達の味方だ。」?
「どんな事があっても、君達の事を信じるぞ。」?

教師達のそう言う言葉は何だったのだろう。
人の事を悪く言ってはいけないのはわかっているけど、こんな大人には・・・こんな人間にはあたしはなりたくないと思った。

そうして、一方的に決めつけられ注意された呼び出しが終わる。

話の間、ずっと一護は何も言わず、ただその生徒指導の教師を見ていた。
何を言われても、いくら大声で威嚇のような事をされても、臆する事なく、その教師から目を離さず、ただ真っすぐその教師を見ていた。
一護の性格上、怖じ気づく事はしたくないって事なのだろうけど、それがまた印象が悪いのだろうなぁ・・・

職員室を出た後、我慢出来なくなったあたしは一護に・・・

「何であたしが言おうとした事止めたんだよ!結局、あんたが全部悪くて、あたしは‘あんたに巻き込まれた’みたいな事になっちゃったじゃん!そうじゃないだろう?昨日の喧嘩の事も、あたしの事も!!庇われたって嬉しくねぇーよ!」

ここまで言うつもりはなかった。一護は悪くないのだから。
一護を少しでも助けてやれなかった自分自身に怒っていたのかもしれない。

それをも理解しているように、一護が・・・

「結局は喧嘩でお前を巻き込んじまったっていう事実は確かだろ?それに、理解をしようともしてくれない奴らに、言ったって何も変わらねぇよ。
その色を黒だって信じ込んでいる奴らに、本当はそれは白なんだって言うようなもんじゃねぇか。
最初は何か言えばわかってくれるなんて思ったけど、一度目に見ただけでわかったしよ・・・。
それに、俺そんな口うまくねぇし。」

一護はひどく不器用で、とても真っすぐな奴だ。


・・・確かに、そうだよ。
そのもう諦める気持ちもわかる。
でも、あたしにくらいは・・・
昔から知ってるあたしくらいにはさ・・・

「でも、あたしくらいには遠慮すんなよ!あたしが勝手に手を貸した訳だし、あそこで目をつけられようが、何か言われようがあたしくらいにならs・・・」
「・・・だからだよ。」

一護は・・・

「え・・・?」
「遠慮なんてしてねぇよ。ずっと知ってるお前まで傷つけたくねぇんだよ。・・・もう嫌なんだよ、そういうの。」
「・・・一護・・・」
「たつき・・・」
「・・・」
「・・・ごめんな。」

・・・ひどく不器用で、とても真っすぐな奴だ。


そして、あたしは無力だ。
こういう時に、こいつを助けてやれないなんて・・・


こうした情報はすぐに広まり、悪い方にしか進まない。
「他校の生徒との喧嘩」、「それに一護が勝って、相手が怪我をした」
過程のない結果だけの情報が、どこからか知らない内に広まっていく。

外見から判断して、一護を最初から敬遠していた生徒達は「ああ、やっぱりか」という反応から、結果だけしか聞いていないその情報に真実ではない過程を捏造し、それを噂として流す。
敬遠していなかった生徒達もそうした情報を聞いて、一護と距離を置く。
一護がそうした「喧嘩」をすればするほど、それは大きくなっていった。

それは高校に来ても同じ。
中学の結果だけの情報を高校の教師が得て、一護をマークする。
生徒達も同じようだ。
同じ中学の生徒の噂、周りの中学での一護の噂が、一護の悪い評判を立たせるのは充分で・・・。
現在(いま)もこうして一護は呼び出しを喰らう。
中学からの繰り返し。


“何で、何で本当のこいつを見てやらない!?”
“こいつは、こんなに真っすぐなのに!”
“・・・本当は、こんなに優しい奴なのに。”


それでも、親友の茶渡、高校からできた友人である浅野・小島、
そして、あたしの親友である織姫が一護を少し理解してくれている事は、素直に嬉しかった。


もっと本当の自分を出して、見せてやればいいのに。
あいつは、必要以上な事を言わないし、見せない。
そして、理不尽な喧嘩でさえ、最終的には売られた喧嘩は買ってしまう。
あいつの性格がそうさせてしまうのだろう。
その上、不器用で真っすぐだから、上手くかわせないんだ。

少しは一護自身の責任もあるのかもと時々思う。
・・・全く困った損な性格だよ、あんたは。


その光景を見て、教室に向かうまでに色々な事を思い出す。
それの中で自分の考えを言いながらも、最後にオチをつけてしまったみたいでそれが妙に可笑しかった。
それは一護にも問題が少なからずあるっていうのに納得だからだと思う。



そんな事を考えていたら、自分の教室の前まで来ていた。
早く課題を探して、部活に行かなきゃ。
そう思って、教室のドアを開けると・・・

「あら?有沢さん?」

もう放課後だから誰もいないと思っていたので、その声にあたしは驚く。
誰かと思い、その声の方を向くと・・・

「・・・あ、朽木さん?」

そこには朽木さんが机に座っていた。

彼女の名前は朽木ルキア。
半端な時期から転校してきてもう1ヶ月半が経とうとしている。
「謎の多い美少女転校生」として転校当初から注目度が高かったが、今は一護とよく一緒にいる事から様々な噂が立てられ、別の注目度も高くなっている。

一護との関係は、朽木さんも一護も詳しく言わないからよくわからない。
少し作っているような感じがしないでもないと思ったけど、何度か話して別に悪い気は全然しない。
ちょっと間違ったような変わった言葉遣い。お嬢様?口調だからとかではなく、その凛とした姿・態度に気品がある子だなぁと感じた。

「どうなさいましたの?」

何で教室に残っているのか、と聞こうとする前に、朽木さんがあたしに尋ねてきた。
自分が聞こうとした瞬間に尋ねられたので少し驚いたけど、あたしはいつも接している時と同じように答える。

「あ、うん。今日の課題、教室に置き忘れちゃってさ~。部活前に取りに来たんだ。」
「まぁ、そうでしたの。」
「うん。・・・朽木さんは?こんな時間までどうしたの?」
「あ、私は今日日直でしたの。黒崎くんと一緒に仕事をしていたのですが、黒崎くんが先生方にお呼び出しされたみたいで・・・」


あ、そうだ。今日の日直は一護と朽木さんだった。
別に今日の日直は誰だなんて、自分の番が近くなるまであまり気に留めないのが普通なんだけど・・・。
たぶん、一護が途中で呼び出されたので日直の仕事が終わらないのだろう。
迷惑かけちゃってるよなぁ・・・

「ごめん!一護の奴も本当に困った奴だよね。迷惑かけちゃってごめんね!許してやって。」

・・・何であたしが謝ってんだろ。
一護の事なのに・・・変な感じだ。

「いえ、黒崎くんは日誌も書いて、残りを私が書くだけですの。後は、一緒に提出するのを待っていればいいだけですし。迷惑じゃありませんわ。」

・・・あぁ、さすが一護、とちょっと思った。
他人に最小限の迷惑しかかけないようにしている・・・それもたぶん無意識で。

朽木さんも困っている様子もないけれど、「そっか。ごめんね。」と言い付けたして、あたしは目的である課題を探し始める。
「手伝いましょうか?」と言う朽木さんに、大丈夫だし残りの仕事を済ませた方がいいと言い、朽木さんは日直の仕事、あたしは課題探しとそれぞれの目的に戻った。

予想していた机の中から課題は簡単に見つかり、早く部活に戻りたいので、朽木さんに一言言って教室を出ようとした時・・・

「有沢さんは、黒崎くんの幼馴染でしたよね?」

朽木さんから唐突にそんな事を聞かれる。
何でそんな事を、とも少し思ったけど、答えられない理由はないのであたしは答える。

「あ、うん。幼馴染っていうか、腐れ縁っていうかさ。まぁ、あいつとは長い付き合いだからだいたいの事は知ってるよ。」
「・・・そうですか。」

それを聞いて、朽木さんは笑った。
いつもの綺麗に整った笑顔とは違う少し和らいだ笑顔で、それを聞いて嬉しいという様な笑顔で。
女であるあたしが言うのはちょっとおかしいかもしれないが、とても綺麗だと思った。

「先生方とか・・・生徒の方達も、有沢さんみたいな方ならいいですのにね。」
「・・・え?」

朽木さんの唐突な言葉に、あたしは聞き返すような言葉を漏らす。
そんなあたしをよそに、朽木さんはさらに続けた。

「いえ、黒崎くんって外見などでよく判断されてしまうでしょう?幼馴染だからっていうのもあるのでしょうけど、有沢さんは外見とかで判断しないと思ったので・・・」
「・・・」
「だから皆さんも有沢さんのように、黒崎くんの事もっとそういうのなしに見てみればいいのにと・・・ちょっと思ってしまいましたの。」


朽木さんは凄い、と思った。
織姫にもそれを感じだけど・・・それ以上に。


あぁ、そうか。

そうだったんだ。

朽木さんはちゃんと一護の事を見てくれているんだ・・・


どうしてそこまで理解しているのか、それは二人の関係からきているのか、・・・色々な事が思い浮かんだけど、今はそんなのどうでも良くて、素直に嬉しく思った。
そして、何でかわからないけど、ちょっと悔しいと思う自分もいた。


そう考えていると、朽木さんはくすっと笑いながら・・・

「・・・でも、黒崎くんにも問題ありだと思いますわ。言い訳もしない代わりに、必要以上の事を言わないのですから。」
「そうそう!喧嘩も最終的に買っちゃうしね。困った性格だよ、あいつは。」
「ええ、その上、損な性格ですわ。」

あまりにお互いの意見が噛み合ったので、あたし達は顔を見合わせて、次の瞬間には笑っていた。

朽木さんは上品そうに、でも、とても可笑しそうに笑い、
あたしはいつもより少し声を張って笑う。


「じゃあ、またね。」と課題を手にしながら言うあたしに、朽木さんはまた整った笑顔に戻り、微笑んで返事を返す。


部活へと急いで、あたしは走る。

何だか今日は、特別な日に思えた。

自分の幼馴染を理解してくれる子がいるのに気づき、その子は幼馴染の傍にいる。

それがとても嬉しく、何だか悔しいとまた思う。

嬉しいという感情はわかる。
でも、悔しいと思うのは何故だろう。

幼馴染に・・・一護に何か先を越された感覚なのだろうか、その理由はよくわからない。


「有沢!!一体、何してたんだ!早く来て、練習だ!」
「押忍!すみません!!」

部活に遅れたあたしは、顧問に何故かいつもより大きな声で謝った。














あとがき
アンケートリクエスト第11弾・一護×ルキア←一護+たつきを再録です。

やはりルキアは一護の嫁!というのをテーマに、
そのインパクトをより強くなる構成は幼馴染であるたつきがイチルキについて語ることだろうなぁと思い、妄想爆発で構成した作品です。

ああ、自分の幼馴染にも大切な人ができたんだな。

という時、何とも表現し難い感情があったりしますよね。

そこにも重点を置きつつ、イチルキを、という想いでのこの作品でした。

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